今回のテーマはATPを知って脂肪燃焼です。
運動が続かないという方は、ぜひ最後まで見てください。

ATP(アデノシン三リン酸, Adenosine Triphosphate)は、生体内でエネルギーを運搬・供給する分子で、すべての生物にとって不可欠なエネルギー源であり、「細胞のエネルギー通貨」とも呼ばれます。
このATPが体内で生産できなくなると最後には死に至ります。
詳しいプロセスは割愛しますが、ATPは私たちが生きていくうえで不可欠なものだという事です。
では、まずはATPの構造からみてみましょう。

ATPの構造
ATPは以下の3つの成分から構成されています。

  1. アデニン(塩基)
  2. リボース(糖)
  3. リン酸基(3つ)

このうち、リン酸基の結合には高エネルギーが蓄えられており、ATPの加水分解により、ATP → ADP(アデノシン二リン酸) + 無機リン酸(Pi) + エネルギーという反応が起こることで、このエネルギーが活動に利用されます。
つぎに、ATPの役割を見ていきます。

ATPの役割

  1. 筋収縮(運動時のエネルギー供給)
    ・筋肉はATPを利用してアクチンミオシンが相互作用し、収縮を引き起こします。
    ・筋肉に蓄えられているATPは約3~5秒で枯渇し、クレアチンリン酸(CP)、解糖系、有酸素代謝がATPを再合成します。
  2. 神経伝達(シナプスでの情報伝達)
    ・シナプス小胞の放出(神経伝達物質の分泌)にはATPが必要。
    Na⁺/K⁺ポンプの働きによって、神経細胞の活動電位が維持されます。
  3. 生体合成(タンパク質やDNAの合成)
    ・細胞・組織の構築(成長・修復)
    ・生理機能の維持(ホルモン・酵素・代謝産物の合成)
    ・エネルギー貯蔵(脂質・グリコーゲンの合成)
  4. イオンポンプの作動(ナトリウム・カリウムポンプなど)
    ・Na⁺/K⁺ポンプやCa²⁺ポンプなどの能動輸送にはATPが不可欠。
    ・細胞内外のイオン濃度バランスを維持し、興奮性細胞(神経・筋肉など)の正常な機能を保つ。

上記のように、様々な生体活動にATPは利用されています。
そんなATPを、体内でどのように作っているのでしょうか。

ATPの合成
ATPは主にミトコンドリアで合成され、以下の3つの経路で生産されます。

  1. 解糖系(酸素不要、細胞質で行われる)
    ・グルコース(ブドウ糖)からATPを生成。
    ・2ATP/1分子のグルコースが生産される。
    ・短時間のエネルギー供給(無酸素運動時に重要)。
  2. クエン酸回路(TCA回路)(ミトコンドリア内で酸素を使ってATPを生成)
    ・ピルビン酸がミトコンドリアに取り込まれ、アセチルCoAへ変換。
    NADHFADH₂が電子伝達系にエネルギーを供給。
  3. 電子伝達系(酸素を利用して大量のATPを生産)
    ・NADHやFADH₂からATPを合成。
    ・1分子のグルコースから約34~36ATPを生成(最も効率的な経路)。

    エネルギー産生経路 場所 酸素 ATP産生量
    解糖系 細胞質 不要 2ATP/1分子グルコース
    クエン酸回路(TCA回路) ミトコンドリア基質 必要 2ATP/1分子グルコース
    電子伝達系(酸化的リン酸化) ミトコンドリア内膜 必要 約34ATP/1分子グルコース

特に電子伝達系は効率が高く大量のATPを作り出せます。
この生産経路が途切れることなく、続いてくれている事で私たちの身体は動くことが出来ているのです。
ここからが大事です!
トレーニング(運動)をされる方や、ダイエット、健康増進を目指す方は、ATPと運動の関係も知っておくといいと思います。

ATPと運動の関係
運動時にはATPが大量に消費されますが、筋肉内に貯蔵されているATPは数秒で枯渇します。
そのため、ATPを素早く補充するために以下の3つのエネルギー供給系が働きます。

運動時のATP供給系

エネルギー供給系 主な特徴 継続時間
ATP-CP系(クレアチンリン酸系) 短時間で素早くATP供給 7~8秒間 短距離走、ウエイトリフティング
解糖系(乳酸系) グルコースを分解してATPを生成(無酸素) 数十秒~1分程度 400m走、HIIT
有酸素系(酸化的リン酸化) ミトコンドリアで大量のATPを生成 数分~ マラソン、長距離走

上記のように運動時間が長くなるにつれて、エネルギーの供給先が変わっていきます。
長時間の運動になればなるほど、有酸素系が働くようになります。

ATPの生産に必要な物質

エネルギー供給経路 主な基質(ATPを生産する物質) 補酵素・補因子 酸素の必要性
ATP-CP系(ホスファゲン系) クレアチンリン酸(CP) なし 不要(無酸素系)
解糖系(嫌気的代謝) グルコース、グリコーゲン NAD⁺(補酵素) 不要(無酸素系)
酸化系(好気的代謝) グルコース、グリコーゲン、脂肪酸、アミノ酸 NAD⁺、FAD(補酵素)、CoA 必要(有酸素系)

酸化系(有酸素系)を見ていただくと分かる様に、ATPを生産するのに脂肪酸が必要ということは、運動時間が長くなれば脂肪を燃焼しやすくなるという事は、ダイエットしたい方には朗報ですね!
次に運動強度も考えていきましょう。

運動強度とATP供給経路の関係

運動強度 主なエネルギー供給系 使用される基質 主な運動の例
100%(全力) ATP-CP系(ホスファゲン系) クレアチンリン酸(CP) 100m走、ウエイトリフティング
80~100%(非常にきつい) 解糖系(嫌気的代謝) グルコース、グリコーゲン 400m走、HIIT
50~80%(ややきつい~かなりきつい) 酸化系(好気的代謝) + 嫌気的解糖 グルコース、グリコーゲン 1500m走、サッカー、バスケケットボール
20~50%(楽に感じる~ややきつい) 酸化系(好気的代謝) 脂肪酸、グルコース ジョギング、ウォーキング
20%以下(楽) 酸化系(好気的代謝) 主に脂肪酸 散歩、日常活動

上記の強度別で見ていくと、運動強度50%以下脂肪酸が使われやすいことがわかります。
まとめると、運動強度50%以下の運動を数分以上行う事が脂肪燃焼には効率的と言うことで、ダイエットするにはなぜ運動が必要なのかを理解できると思います!

運動する=ATPを使うという事で、身体が疲労するという事ですので、次の運動の為に回復させる必要があります。回復させるためにはどのくらい時間が必要なのでしょうか?
ATPの再合成にかかる時間もみてみましょう。

ATP再合成の回復時間

エネルギー系 ATP回復時間(50%) ATP回復時間(完全回復)
ATP-CP系(ホスファゲン) 30秒 3分
解糖系(嫌気的) 5~10分 30分~1時間
酸化系(好気的) 30分~1時間 数時間~1日

上記のように、エネルギー供給経路によって回復時間が違う事がわかると思います。
瞬発系の運動(100m走やウエイトリフティングなど)は、30秒~3分で回復
数十秒程度のきつい運動(400m走など)は、5分~1時間程度で回復
数分以上の比較的楽と感じる運動(ジョギングやウォーキング)は、30分~1日程度で回復
運動時間が長くなれば回復にも時間がかかるという事ですね。
※筋肉や関節に痛みや違和感などがある場合は、運動を中止し医療機関を受診しましょう。

ここまでATPのことを知っていただき、なぜ運動をすると脂肪が燃焼するのか、お分かりいただけると思います。
漠然と「運動すると脂肪燃焼になるよね」ではなく、「こうだから脂肪が燃焼されるよね」を知っていることは、運動による脂肪燃焼の理解度が高くなるという事です。
理解度が上がれば、モチベーションアップとなり、それが継続へと繋がっていきます。

次回のテーマは、ATPを知るとスポーツパフォーマンスアップにも繋がる!です。
今日も素敵な1日になりますように。

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