今回のテーマはフレイルです。
前回のサルコペニアとは、高齢になるに伴い、筋肉の量が減少していく現象のこと。でしたが、
今回のフレイルとは、厚生労働省研究班の報告では、「加齢ともに心身の活力(運動機能、認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」
ちょっと分かりにくいですが、健康な状態とサポートが必要な介護状態の中間という事です。
そして、多くの方はフレイルの状態を経て要介護状態へ進むと考えられています。
なので、フレイルに早く気付き、予防していく事が大切です。
フレイルの基準
ではまず、ご自身がフレイルかどうかをチェックしてみましょう。
①体重減少※意図しない年間4.5kgまたは5%以上の減少
②疲れやすい※何をするのも面倒だと週3~4日以上感じる
③歩行速度の低下
④握力の低下
⑤身体活動量の低下
以上5項目のうち、3項目以上該当するとフレイル
1~2項目該当の場合はフレイルの前段階プレフレイル
と判断されます。
フレイル状態になるとどうなるのか
フレイル状態になると死亡率の上昇、身体能力の低下、何らかの病気に罹りやすくなったり、ストレスに弱い状態なっています。
例えば、健常な人であれば、風邪をひいても数日で治りますが、フレイル状態になっていると風邪をこじらせて肺炎を発症する可能性が高まります。
フレイルを予防するには
フレイルを予防するには、まずフレイルサイクルを理解しましょう。
前回のサルコペニア(加齢に伴う筋肉量低下や疾患)を出発点とすると、
サルコペニア
↓
筋力低下
↓
身体機能低下
↓
活動量低下
↓
エネルギー消費量低下
↓
食事量低下
↓
慢性的な低栄養
↓
サルコペニア
このような悪循環を経て、フレイルが進行していきます。
そして、このサイクルを適切な介入によって断ち切ることが大事です。
フレイルへの介入方法には、持病のコントロール、運動療法、栄養療法、感染症予防などがあります。
持病のコントロール
糖尿病や高血圧、呼吸器疾患、整形外科的疾患などの慢性的疾患がある場合は、まず持病のコントロールをすることが必要です。持病のコントロールがされていないと高齢の方は体を動かすという気持ちになれない事もありますし、持病の治療がうまくいっていないとフレイルを悪化させてしまう恐れもあります。
運動療法と栄養療法
運動療法は個人に合ったものから始める事が大切です。
高齢者の方がいきなりジムでマシンを使ってトレーニングをする必要はありません。
椅子に座ったり立ち上がったりを繰り返したり、歩行距離を徐々に延ばしたりと運動強度を調整していけば良いのです。筋力が低下している状態では、転倒や骨折の危険性もあります。
そして、栄養療法も必ずセットで行ってください。
低栄養状態で運動をすると、筋肉が付かないどころか更に低栄養を助長してしまいます。
食事からしっかりと必要な栄養を摂取してください。
栄養の参考にこちらを読んでみてください。(三大栄養素PFCバランスについて)
感染症予防
高齢者の場合、免疫力が低下している事が多いためインフルエンザや肺炎に罹りやすいと言われています。インフルエンザや肺炎をきっかけに重症化し、入院、寝たきりになってしまう事もあります。
日常から適度な運動やバランスの良い食事で元気な体作りだけでなく、インフルエンザや肺炎のワクチンを接種しておくことも予防の1つと言えます。
これらを適切に行っていく事がフレイルの予防、フレイルの進行を遅らせることに繋がっていきます。
サルコペニアの記事でも書きましたが、フレイルは高齢化社会では非常に重要な社会課題の一つと言えます。
ご自身の健康は、ご自身だけのためではなく社会全体のためもなると考えると、億劫な運動や食事管理も少し頑張れそうではないですか。
次回はロコモティブシンドロームについてお話しますね。
今日も素敵な1日になりますように。